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ヘッドマウントディスプレイを用いた「ドリルジャンボ無線遠隔操作システム」の開発
2024年11月28日
佐藤工業は、(株)ポケット・クエリーズ、古河ロックドリル(株)と共同で、山岳トンネル施工における省人化・自動化・ロボット化技術として、ヘッドマウントディスプレイを用いた「ドリルジャンボ無線遠隔操作システム」を開発し、国土交通省四国地方整備局発注の「令和4-6年度 桑野道路下大野トンネル工事」に導入して、実証試験による有効性を確認しました。
<システムの概要>
当システムは、最新のヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を用いて、ドリルジャンボ(以下、ジャンボ)の無線遠隔操作を実現するものです。従来の無線操作システムでは多数のカメラとディスプレイを使用する方式が一般的であり、操作に熟達が求められます。当システムのHMDでは、切羽画像(180°魚眼カメラ)、詳細ズーム画像、パススルー画像(ジャンボ操作ユニット)の3つの画像を合成して表示するため、あたかも実際のジャンボ操作室にいる感覚でジャンボの操作が可能となります。
- システム構成 -
◇ ジャンボ取付カメラ2台 〔写真-1〕
・180°魚眼(全体周囲用)
・部分詳細ズーム(HMDの首振り向きに合わせてカメラ方向制御+ズーム)
・HMDのパススルー画像(ジャンボ操作ユニットを直視)
◇ヘッドマウントディスプレイ 〔写真-2〕
・市販品4K対応
・3画面合成による視覚支援システム ※特許出願済み 〔写真-3〕
◇ジャンボ操作ユニット
・ジャンボ操作室と同一品(ジャンボ搭載器と同一操作が可能)
◇無線システム
・指向性アンテナ(Wi-Fi5方式) 〔写真-4〕
<実証試験結果>
実証は段階的に3ステップで実施しました。
ステップ1:有線による遠隔操作。
ステップ2:視覚支援(HMD)の無線化。
ステップ3:ジャンボ操作と視覚支援の両方を遠隔無線化。
実証試験は、切羽作業の中で実際のジャンボオペレータのもとで行い、ジャンボ操作の無線遠隔化、HMDによる視覚支援で、共に良好な結果を得ることができました。
無線化することで懸念された「操作遅延」については、「0.2秒」以内の結果となりました〔写真-5、写真-6〕。
これらのことから、ジャンボによる自動せん孔だけでなく、手動せん孔においても無線遠隔操作が可能となりました。
<コンセプト>
当社では、トンネル施工の省人化・自動化に以前から取り組んできました。最近では「自己充塡覆工構築システム」「発破パターン自動適正化システム」について既に実用化し効果を確認しています。また「ドリルジャンボの遠隔操作施工」については2023年度から取り組みを開始し、今後の自動化・ロボット化につながる基盤技術として現場実証を重ねてきました。
今後はこれらの技術を組み合わせ、切羽後方の施工指令室にいる「施工責任者」が発破パターンと装薬量を「発破パターン自動適正化システム」で決定して、施工指令室内のジャンボオペレータに指示するとともに施工指示データをジャンボに転送し、遠隔操作でフルオートせん孔作業を開始する一連の作業の自動化をめざしてまいります。
<今後の取り組み>
今後、ヘッドマウントディスプレイを用いた「ドリルジャンボ無線遠隔操作システム」は、製品化も視野に実証を重ねる予定です。また、HMDを使った操作支援を他工種、他機械へ展開することも進めてまいります。