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ステレオカメラを用いたトンネル切羽監視システムの開発
2024年09月12日
佐藤工業は、ステレオカメラを用いて山岳トンネルの切羽監視を行うシステムを開発しました。当システムを導入することにより、切羽における作業の安全性の向上が図られます。
【システムの概要】
当システムは、ステレオカメラ、ノート型パソコン、警報装置(積層式表示灯)で構成されます。ステレオカメラは、発破装薬時に切羽前面の7~8m離れた位置に設置し、切羽を撮影した画像から得られるエリアごとの距離変化のデータをパソコン画面で表示し、時間間隔で比較することにより、切羽全面の変位をシステムが判定します。そして設定した変位の限界値を超える場合には、警報装置が音と光で作業員に知らせます。
ステレオカメラによる距離測定は、三角測量の原理と同じく、対象物を撮影する左右のレンズに映る差(視差値)とステレオカメラの基線長(B)と焦点距離(F)から計算します。一般にステレオカメラは、距離が遠い物ほど測定誤差が生じるので、当システムでは撮影エリアを分割して設定時間の測定を行い、分割エリアごとに測定距離を平均化する方法を用いて誤差を低減します。この方法により、設定分割エリア内での平均的な変位を捉えることが可能となります。
なお、切羽監視時に撮影エリア内に作業員や機械が写り込む場合には、それを除外する機能もシステム内に組み込んでいます。
【システムの特長】
当システムは、切羽監視責任者による監視の補助を行うものです。
切羽面の変位や肌落ちを、事前に連続で捉え、変位や肌落ちなどの予兆が観測される場合には、警報装置により、瞬時に音と光で作業員に知らせることができ、切羽面作業の安全性が高まります。
【開発の経緯】
山岳トンネル工事の切羽における労働災害の防止を図るため、2016年12月に「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」が厚生労働省から公表され、2018年1月、2024年3月と、2回の改正が行われています。
そのガイドラインでは、事業者(施工業者)が講ずることが望ましい事項として、①切羽への立入りを原則として禁止すること、②肌落ち防止計画の策定・実施・変更、③切羽監視責任者の選任、④具体的な肌落ち防止対策、が挙げられています。
さらに切羽監視責任者による監視を補助するために、切羽変位計測が肌落ち災害防止対策の一つとなっており、当社では、ステレオカメラに着目した計測方法として当システムを開発しました。
【今後の取り組み】
山岳トンネルの切羽においては、トンネル内の照度、照明の角度、切羽面の湧水状況、切羽面の凹凸度合いなどが一様でなく、異なる状態のなかで切羽監視を行うことになります。そのため実トンネルにおける測定を通して、変位の限界値の設定や、それらのデータの蓄積、測定精度の向上を図ることで、さらなる安全性を高めていきます。