CONSTRUCTION
建築
CONSTRUCTION
建築
設計・施工がワンチームとなり
最先端テクノロジーを駆使した建築を実現。
技術センターSOU
技術センターSOUは、2022年2月に竣工。技術研究開発と現場支援の拠点であり、センター棟、実験棟、音響実験棟の3施設と、テストフィールドで構成されている。センター棟では、今後さらにニーズが高まる環境配慮建造物として、「Nearly ZEB」の認証取得を計画。その実現のために13もの特殊技術を取り入れた(※1)。実験棟には高さ10mの反力壁や環境実験室をはじめとする実験設備を、音響実験棟にはJIS・ISOの音響測定規格を満たす無響室や残響室などの特殊実験室を配した。意匠・構造・設備の設計部門と、現場の施工管理部門が、ワンチームとなってつくりあげた技術センターSOU。その挑戦を紹介する。
施工管理
所長 本田
1994年入社
本プロジェクトの作業所長として、工事を推進。関係者を集めたワーキンググループをつくり、計画段階から打ち合わせを行うことで、同じ認識を共有した状態で工事に臨んだ。
施工管理
工事担当 今野
2018年入社
本プロジェクトでは実験棟の施工管理を担当。初めて主担当として工事を一貫して任される。自分の考えが現場に反映されるようになり、改めて計画や段取りの大切さを学んだ。
意匠設計
意匠設計部長 植木
1990年入社
建物に求められる機能に対して、最適な技術を抽出したうえで組み合わせ、省エネ、機能、コスト、デザインにおいてバランスのとれた意匠設計を行った。
構造設計
構造設計部長 内川
1993年入社
ZEBを実現するために導入した数々の特殊技術には制約があり、納まりの部分に特徴があるものも多く、意匠設計部門と議論を重ねながら設計を固めていった。
設備設計
設備設計課長 小野寺
1993年入社
大型マンションの案件が動いている中で本プロジェクトを兼任。時間とコストが限られる中で、要求を満たしつつ、建物を使う佐藤工業の職員の利便性を考慮した設計を行った。
意匠設計
意匠設計担当 道上
2017年入社
本プロジェクトで、特殊技術が導入された建物の設計の知見を得る。その後、ZEBに関するパンフレットの作成を担当し、佐藤工業のソリューションを社外へと発信している。
構造設計
構造設計担当 大嶋
2008年入社
実験棟、音響実験棟の構造設計を担当。どのような実験が行われるのか理解することから始めて、求められる機能を実現でき、かつ施工性の良いディテールの検討を慎重に行った。
施工管理
工事担当 平岡
2021年入社
入社1年目にこのプロジェクトでの施工管理を経験。先輩から助言を受けながら、センター棟の外装の仕上げがきれいに見えるように納まりや施工手順を検討した。
技術センターSOUのセンター棟は、ZEB認証を取得できる「環境に配慮した」建物であることが要求された。その実現のためには、建物で消費する年間のエネルギー(照明や冷暖房など消費されるエネルギー)を、省エネ対策によって50%以上削減しなければならない。意匠設計の植木、構造設計の内川、設備設計の小野寺をはじめとする設計チームは検討を開始した。テーマは「この建物に最も有効な省エネ方法は何か」。数ある特殊技術の中から採用したのは躯体放射冷暖房システム(TABS)。このシステムは、天井や床のコンクリートの中にパイプを埋め込み、熱源機でつくられた冷温水を通すことで躯体に蓄熱させるシステムで、高い省エネ効果が期待できる。植木は早速、基本設計図にこの躯体放射冷暖房システムを落とし込む。また、内川は「一般的なオフィスより床の荷重が大きくなるが、高荷重に耐えられる床版を検討するから問題ない。構造設計については任せてくれ」と皆に声をかけた。そして、小野寺も要求通り建物を機能させるための設備の検討を開始した。
50%減の省エネ対策は、TABSだけで成り立つものではない。設計チームでは、TABSとの相性を考慮したその他の特殊技術の選定を行った。植木は、その他の特殊技術について詳細設計を行い、小野寺も設備チームで機械・電気図面を描いてエネルギー計算をするなど、省エネの実現と自然エネルギーを有効活用できるようブラッシュアップを重ねていった。さらに「地中からも熱が採取できるのではないか」とのアイデアから、免震構造によって生まれた空間である免震ピット(地下空間)の活用と、ボアホールによる地中熱利用の計画を進めた。その中で内川は、通常のボアホール設置に加え「(建物を支える構造的な)杭を利用した熱採取」が実現可能か検討し、杭中からの地中熱利用も併用した。このような複数の手法により、夏は冷たく、冬は温かい地中熱を利用できるようになり、省エネの効率化を図ることが可能となるシステムをつくり上げた。こうして「環境に配慮した建物」としてZEBの実現を目指した技術センターSOUのセンター棟においては、実に13もの特殊技術を導入することで、省エネ50%を可能にする設計が完成したのだった。
この省エネ設計で一番に苦労した点は、ユーザビリティとのバランスについてであった。省エネを追求するあまり、建物を使用する人たちにとっての健康性や快適性が失われては意味がない。例えば、躯体放射冷暖房システムを機能させるためには、天井と床をコンクリートむき出しとしなければならず、120人の社員が働くオフィスとしてはあまりにも無機質となる。またコンクリートに囲まれることで残響時間が長くなり、音が必要以上に響いてしまう恐れもあった。そこで、「光の反射を利用した壁材を使い、同じ光量でも明るく感じることができるオフィスにする」、「音を吸収しやすいカーテンを設置する」など、さまざまな工夫で課題を一つひとつ乗り越えていったのだった。このように、環境負担軽減への配慮に加え、建物内で実際に働く職員が快適に過ごすことができる高い機能性をもつ「技術センターSOU」の設計図面が完成した。そして意匠・構造・設備の設計チームから施工チームへと、バトンは引き継がれた。
「技術センターの工事を任せたい」と所長の本田に声がかかったのは、工事が始まる半年ほど前になる。センター棟はZEBを実現するため、多くの特殊技術が採用されていた。また、実験棟には反力壁、音響実験棟には音響実験装置など、経験したことのない工事や工種が多々存在していた。そこで本田はまず、それぞれの特殊技術に対して実績がある専門工事会社へヒアリングを実施した。そしてパートナー会社が決まるとすぐに、ワーキンググループを結成し何度も打ち合わせを重ね、工事における課題点を徹底的に洗い出した。「わからないことが一つでもあると工事はできない」。この事前準備の徹底ぶりこそ、本田が大切にする仕事への向き合い方だ。このワーキンググループには、工事に携わるすべての社員に参加してもらった。「皆が同じ認識を持つことから工事は始まる」。これも本田の考え方だ。徹底した事前準備のもと、全員に同じ認識が共有され、工事はスタートした。
この現場には、若手職員の施工管理が多く配属され、彼らもまた初めてづくしの環境の中で果敢にチャレンジを続けていた。技術センターSOUは佐藤工業の創業160周年記念事業の一環として進められたプロジェクトでもあり、社内の注目度は高い。また実際に建物を使用するのは、建設のプロである佐藤工業の社員。若手にとっては、大きなプレッシャーを感じる現場だった。そんな中でも若手職員たちは、「こんなチャンスに巡り会えたことに感謝しよう」と前向きに、そして懸命に仕事に取り組んでいた。施工管理の仕事は、「品質」「原価」「工程」「安全」「環境」の管理となる。その役割を全うするため、設計チームから引き継がれた図面を読み込み、考え、知恵をしぼりながら、それぞれが良い仕事をしようと挑んでいた。それでも思わぬ事態が生じることもある。今野が担当していた実験棟では、実験装置等を移動させるための設備として、天井クレーンを設置することになっていた。クレーンは天井ぎりぎりの高い位置に設置するため、屋根を取りつける前に設置する計画であったが、協力会社との行き違いから予定の期日に設置ができなくなってしまった。これでは工事全体に遅れが出てしまう。「先に屋根工事を進めよう。」本田はそう判断し、今野たちに工程順を変えるよう指示をだした。突然の工程変更と厳しい条件下での作業ではあったが、変更後の工程順や注意点について、今野たちは専門工事会社と綿密に検討した。まさに本田が大切にする徹底した事前準備を行ったのだ。皆が同じ認識を共有し行われた天井クレーン設置作業は、大きなトラブルを起こすことなく無事完了した。施工管理の仕事は経験職と言われる。思わぬ事態が生じてしまった際、自分で考えリカバリーするという経験も、施工管理にとっては財産となる。今野たちが挑戦し続けたここでの経験は自信となって、これからの彼らの成長を力強く後押ししていくことだろう。
2022年2月。晴れやかに技術センターSOUの竣工式が行われた。施主も、設計も、施工も、エンドユーザーも佐藤工業。意匠設計、構造設計、設備設計、そして施工がワンチームとなって乗り越え、先端技術がつまった技術センターSOUを完成させることができた。また、配属された若手職員もこれまでにない経験をする中で、大きく成長できたプロジェクトであった。そして今、この技術センターSOUから、あらたな挑戦が始まっている。競争力強化につながる新技術や新サービスの研究・開発が進められると同時に、センター棟に設けられている研修室では勉強会が活発に行われ、社員一人ひとりの技術の研鑽や、ベテラン社員からは技術が継承されている。次世代を見据え、常に時代の最先端をいくテクノロジーでさらなる「建設品質。」を追求する佐藤工業。「人と技術」の新たなイノベーションが、ワンチームでつくりあげたこの技術センターSOUから生まれている。
CIVIL ENGINEERING
土木
社会的責任が大きく難易度が高い鉄道工事。
完遂できたのは、
現場の思いが一つになったから。